肉離れについて【筋繊維部分断裂】
肉ばなれとは筋繊維の断裂が原因で起こる怪我です。主なきっかけはスポーツや筋トレですが、日常生活でも運動不足の方が稀に痛めます。
なぜ肉ばなれが起こるか?筋肉はゴムのような筋繊維の集合体です。この筋繊維が体を動かす時の負荷に、耐えきれずに切れてしまうから起こります。
多くはスポーツのスタートダッシュやジャンプ、筋肉が温まらない状態での負荷で、筋肉の柔軟性が、筋肉の収縮に耐えきれなくて筋繊維が切れます。
筋繊維断裂の程度はそれぞれ違い、筋繊維数本ならトレーニング後の筋肉痛程度で、数日で気にならなくなります。
筋肉繊維束単位の損傷だと、損傷した筋肉にストレッチや、負荷をかけることで痛みを感じます。筋損傷が大きくなると、切れた部分に凹みが出来き、この凹みがはっきりしている状態ほど重症です。
肉ばなれの合併症
肉ばなれで気を付けなければならないのが、筋肉内の出血です。肉ばなれを起こした際に、損傷の大きさによって内出血が起こります。
この出血が多いと筋肉内(筋肉区画内)で増え、内圧が高くなることで、血管や神経が圧迫されることがあります。これがコンパートメント症候群です。肉ばなれ後に腫れて、末端の指が痺れたり、紫色になるなら、すぐに病院に行きましょう。
それ以外に、骨化性筋炎という続発症があります。
筋肉内の出血が多いと、血液に含まれるカルシウムが残り、それが石灰化して筋肉内で、骨のような硬い組織を形成します。その部分だけ伸びない繊維なので痛みが残り、筋肉が伸びなくなります。
これらコンパートメント症候群や骨化性筋炎にならないためには、肉ばなれ後の初期対処が肝心になります。
肉ばなれの初期治療 (RICE)
肉ばなれ初期対処(48時間以内) 受傷直後に必ず行うのがRICE処置です。
Rest(安静)怪我した筋肉を動かさないようにして、それ以上の悪化出血を防ぎます。重症なら上下の関節が動かないように固定せてもいいでしょう。
Icing(冷却)筋繊維が切れるときに一緒に筋肉内の毛細血管も切れたり傷ついています。そこから出血が起こりますので、血管を収縮させて止血する為にも患部を冷やします。湿布では冷えませんので氷嚢がいいでしょう。
Compression(圧迫)冷却と同じく筋肉内での出血を止めるためにも患部を圧迫します。あまり強すぎたりすると末端に血液が行きにくくなるので、面で強すぎない程度に抑えましょう。
Elevation(挙上)内出血で患部に血液がたまるのを防ぐために患部を心臓より高い位置に置きます。出血もとまりやすいので、受傷後から48時間は出来るだけ行う方が良いでしょう。安静以外はやりすぎると末端の循環が悪くなりますので、感覚が無くなるような感じがあれば、一度感覚が戻るまで安静のみにしましょう。
肉ばなれの鍼治療
RICE処置で、筋肉内の出血を止めた後は、
筋肉内出血の回収と筋繊維の回復です。
これはとても単純です。筋肉内の血管を拡張させる行為を、繰り返すことが一番早く改善します。
具体的な方法ですが、温熱、マッサージ、鍼、超音波、高濃度酸素カプセルなどです。肉ばなれの程度が大きかったり、初期は温熱療法、マッサージは使えません。おすすめは、それ以外の鍼治療、超音波、高濃度酸素カプセルです。
鍼治療は、直接傷ついた筋肉に刺鍼することで、患部と周囲の筋肉を緩め、血管拡張することで内出血を回収して、再生を促します。4、5日に1回のペースなら、どんどん修復が進みます。何もせず安静にしていても、ゆっくり改善はするのですが、改善スピードは停滞しますので、早期改善を図るのなら、改善スピードが停滞するころに、鍼をするのがおすすめです。
超音波も深部の組織の修復には有効です。これは一回の効果が弱いので、毎日行うくらいがいいでしょう。高濃度酸素カプセルも、同じく組織の修復を早めますが、全身に作用するので、患部に特に効果を集中できません。鍼治療か超音波との併用がいいでしょう。鍼治療と超音波ほど、単独の効果は無いと思います。
肉ばなれの後療法(リハビリ)
肉ばなれの後療法は、筋肉の柔軟性を上げる事です。筋肉が再生してきて、痛みが無くなったあたりから、ストレッチを加えていきます。
筋肉は冷えていると伸びないので、治りかけの部分から再度切ることがあります。必ず体を十分に温めてから行いましょう。いきなり全力で伸ばすのではなく、少しずつ痛み違和感が出ない程度にして毎日繰り返します。
リハビリ期も鍼治療、超音波、高濃度酸素カプセル、マッサージ、温熱療法は有効です。併用することをお勧めします。
鍼治療は筋肉に鍼を刺す事で、筋肉内の血管を広げる反射(軸索反射)を起こります。
軸索反射により筋肉内の血管が拡張して、新しい血液が筋肉内に入ります。
新しい血液に含まれる酸素とATPが筋細胞に入ることにより、筋肉は緩み、筋緊張が緩和されるのです。