パーキンソン病治療について
当院の治療によって、パーキンソン病そのものを治すこと、あるいは進行そのものを止めることはできません。これは難病である以上、当院に限らずどの治療法にも言えることです。神経細胞が減少していく根本的な原因は、現在の科学ではまだ解明されていません。原因が解明されていない以上、「完治した」と証明する手段自体が存在しないのです。
当院が目的としているのは、頭皮鍼と運動療法によって、残っている神経細胞の働きをできる範囲で活かし、運動機能と自律神経症状を改善することです。四肢の動きやこわばり、便秘や不眠といった症状を和らげ、日々の生活を少しでも楽にすること、そして自分の力で動ける生活を、できるだけ長く保つこと、寝たきりの状態を遠ざけることを目指しています。
「完治」や「劇的な改善」をお約束するものではありません。できることとできないことを正直にお伝えした上で、投薬治療と並行して受けていただける対症療法の一つとして、当院の治療をご案内しています。


パーキンソン病とは
パーキンソン病は、脳の運動制御に関わる部分の神経細胞が徐々に減少していく進行性の神経変性疾患です。主な症状は、動作が乏しくなる運動貧困、手足の震え(振戦)、筋肉のこわばり、姿勢やバランスの不安定さです。これに加えて、便秘や不眠、血圧の変動といった自律神経症状、進行に伴う認知機能の低下がみられることもあります。
原因はまだ完全には解明されていませんが、神経細胞内にアルファシヌクレインという異常なたんぱく質が蓄積し、神経細胞の機能を妨げながら徐々に細胞を壊していくこと、そしてそれに伴って脳内の運動制御を担う基底核でドーパミンという神経伝達物質が不足することが、主な要因と考えられています。診断は症状の経過と専門医の評価に基づいて行われ、治療の中心は薬物療法と、運動療法を含むリハビリテーションです。
当院では、この運動機能の改善と自律神経症状の改善を目的として、頭皮鍼による治療を行っています。


脳細胞の活動を活性化させる頭皮鍼
パーキンソン病の症状は、基底核という脳の部位でドーパミンが不足し、運動の制御がうまく働かなくなることで現れます。この基底核を含む脳神経細胞の活動を賦活する目的で行うのが、頭皮鍼という鍼治療です。
頭皮鍼は、頭皮の特定部位に鍼を刺すことで、頭蓋骨の奥にある大脳皮質の血管を拡張させ、脳血流を増やすことで脳細胞の活動を活性化させるものです。ただし、これは万能ではありません。すでに変性してしまった細胞や、死滅してしまった細胞が元に戻ることはないからです。頭皮鍼が働きかけられるのは、あくまで残存している神経細胞に対してであり、その活動を維持したり、再び活性化させたりすることに限られます。そのため、症状が重症化していたり、発症からの経過が長くなっていたりする場合は、期待できる改善の幅も小さくなります。
また、手足のこわばりや自律神経症状に対しては、交感神経が過剰に興奮した状態から副交感神経優位への切り替えを目的とした刺鍼も行っています。これにより、体幹部の筋緊張の緩和や、便秘・不眠といった自律神経症状の改善を図っています。

運動機能を支える運動療法
頭皮鍼が中枢(脳)への働きかけであるのに対し、運動療法は末梢、つまり実際に身体を動かす部分への働きかけです。
パーキンソン病では、運動指令が出しにくくなることに加えて、動きが少なくなること自体が、体幹や四肢の筋力低下、関節の可動域低下を招き、姿勢の崩れや歩行の不安定さをさらに悪化させるという悪循環が起こりやすくなります。運動療法では、体幹の安定性を高める運動、バランス機能を維持する運動、歩幅や歩行リズムを保つための歩行練習などを通じて、この悪循環に歯止めをかけることを目指します。
薬物療法で運動症状そのものをコントロールしながら、運動療法で身体の使い方や筋力・バランス能力を維持していくことは、互いを補い合う関係にあると当院は考えています。
頭皮鍼と運動療法の科学的な裏付け
頭皮鍼については、従来の薬物療法に頭皮鍼を併用した群と、薬物療法のみの群を比較したランダム化比較試験のシステマティックレビューが複数報告されており、パーキンソン病の重症度評価スケール(UPDRS)において、頭皮鍼を併用した群でより高い改善がみられたとする報告があります。作用機序としては、脳血流の改善を通じた脳神経細胞の賦活が想定されています。
運動療法については、日本神経学会の「パーキンソン病治療ガイドライン」において、運動療法が身体機能・健康関連QOL・筋力・バランス・歩行速度の改善に有効であることが示されており、複合的な運動療法やトレッドミル歩行、筋力増強運動、バランス運動などが推奨されています。日本作業療法士協会のガイドラインでも、作業療法が運動機能・日常生活動作・QOLの改善に有効であるとされています。
当院はこれらの知見を踏まえ、頭皮鍼と運動療法を組み合わせることで、脳と身体の両面から症状の改善を図っています。
来院での施術はヤールⅣまで
パーキンソン病は、同じ病名であっても、状態には大きな幅があります。当院では、ホーン・ヤールの重症度分類でⅣまでの方を施術の対象としています。
ヤールⅤ、つまり寝たきりの状態になられている方については、残念ながら来院自体が難しく、在宅での鍼灸治療やマッサージ、リハビリをおすすめしています(当院は施術者が一人のため、訪問診療は行っておりません)。
ヤールⅣの方まではお受けしておりますが、介助が必要なレベルの方は、必ずご家族の方の付き添いのもとご来院ください。
よくある質問
Q. パーキンソン病は治りますか?
A. 当院の治療で完治することはありません。現在の医学では、パーキンソン病そのものを治す方法は確立されていません。当院が行っているのは、症状の緩和と、動ける状態を維持することを目的とした対症療法です。
Q. どのくらいの頻度で通院する必要がありますか?
A. 症状や進行度によって異なります。まずは現在の状態を確認させていただいた上で、頻度の目安をご案内しています。
Q. 服薬中ですが、並行して受けられますか?
A. 問題ありません。むしろ、薬物療法と当院の治療を並行して行っていただくことで、それぞれの効果を補い合うことを想定しています。
Q. ヤールⅣを超えていますが、施術は受けられませんか?
A. 病状の進行度によって当院の治療で見込める効果が変わるため、ヤールⅤの段階の方については、在宅での治療をおすすめしています。ご不明な点はご相談ください。
Q. 施術に痛みはありますか?
A. 頭部・体幹部・四肢への刺鍼が中心となります。刺激量は状態に応じて調整しますので、施術中にお気づきの点があればお伝えください。

